卒FITを迎えた(太陽光発電は既に存在する)ご家庭が蓄電池の導入を検討する際、次のようなことを考えるのではないでしょうか。
・「元が取れるのか」
(蓄電池の設置費用を、蓄電池の効果(節電効果)によって回収できるのか?)
・「元が取れるとしたら、どのくらいの期間がかかるのか」
(分かりやすく言うと、「太陽光発電+蓄電池」の節電効果から「太陽光発電のみ」の節電効果を差し引いた効果(節電金額)が、補助金を踏まえた蓄電池の実質的な設置費用を上回るのに何年かかるか?)
一般的には「蓄電池設置費用は高く、元は取れない。」と言われています。
そのような状況の中で、以前のブログ「蓄電池の購入に利用できる補助金。その種類と内容 ~国の補助金、東京都の補助金について~」でお伝えしたとおり、東京都は蓄電池に対する補助金の助成率が高い(「4分の3」)(※)ため、「元が取れる」可能性が他の道府県よりも高くなります。
(※)助成率は、設備費・工事費の 4分の3 です。消費税部分は対象外です。2023年12月時点の情報です。
東京都の補助金に関する詳細(上限額の条件など)は、以下のクール・ネット東京のホームページをご参照ください。
今回のブログを読むと、東京都の補助金を利用した場合に、「元が取れるのか」また「元が取れるとしたら、どのくらいの期間がかかるのか」ということをシミュレーションする方法が分かるワン。
蓄電池の設置費用の回収シミュレーションの前提
シミュレーションと言っても、実際には、以下のような要素次第でいろいろなパターンが出てきます。
・蓄電池の設置費用
・蓄電池の蓄電容量
・太陽光発電量
・各ご家庭の電気の使用状況(電気をたくさん使う・使わないなど)
・自家消費率
・電気料金プラン
ですので、今回のブログでは、いろいろなパターンをシミュレーションするということはせず、「シンプル(大雑把)にシミュレーションする方法(考え方)」を書きたいと思います。
★故障が発生した場合の対応にかかる費用や機器の経年劣化などは考慮しません。
★また、夜間と昼間で料金単価が異なる電気料金プラン(夜間が安くて、昼間が高い)に加入することで、深夜に安い電力を買電し蓄電地に貯め、その貯めた電力を昼間に使用するという使い方で本来は電気代を節約できますが、最近は、以前のように夜間の単価が安くなくなってしまい昼間の単価に近付いていますので、今回のシミュレーションでは考慮しません。
蓄電池の設置費用の回収シミュレーションの計算結果(一例)
太陽光発電の卒FITを迎え、東京都の補助金を利用して蓄電池を設置した場合に、元が取れるか、前提を置いて、シミュレーションしてみます。以下の前提はいずれも我が家の太陽光発電や蓄電池の稼働実績、また、我が家の電力の使用状況などを参考にして、ここでは分かりやすくするために、あえて大雑把な数字を前提に置いています。
精緻なシミュレーションではなく、ざっくりしたものであり、前提自体も様々なケースが想定される中での一つの例となります。
シミュレーションの内容は以下の2点です。
- 東京都の補助金を利用した場合の実質的な設置費用
- 節電金額(どのくらいの期間で元が取れるか)
つまり、「蓄電池の設置にあたり販売業者に支払う金額から東京都の補助金を差し引いた金額」を、「蓄電池の節電効果(※)」で、どのくらいの期間で回収できるか、シミュレーションします。
(※)「太陽光発電+蓄電池」の節電効果から「太陽光発電のみ」の節電効果を差し引いた効果(節電金額)
蓄電池の設置費用等の前提
前提は以下のとおりとします。
・蓄電池の蓄電容量(SII登録値(※)) :10.0kWh
・太陽光パネル設置容量:6.0kW
・設置費用:180万円(税込み:198万円)
(※)「蓄電容量」は、「一般社団法人 環境共創イニシアチブ(略称:SII)」が認定した蓄電容量
実質的な設置費用の計算
上記前提をもとに実質的な設置費用を計算すると、
180万円(税抜き)×3/4(助成率)=135万円の補助金
→実質的な支払い:198万円(税込み)-135万円(補助金)=63万円
「4分の3の助成率」とはすごいなあ。
太陽光発電の設置容量や蓄電池の蓄電容量によって、補助金の上限の条件があるので、クール・ネット東京のホームページでちゃんと確認しなくては。
「上限金額」の条件など詳細は、以下のクール・ネット東京のホームページをご参照ください。
以下は「クール・ネット東京」のサイトからの抜粋です。上記ケースにおいては、「上限」には影響されず、設備費・工事費の 「4分の3」の135万円が補助金額となります。
蓄電池を設置する前までの「売電量」、「電気料金単価」等の前提
前提は以下のとおりとします(今回のシミュレーションに直接関係しない項目も、想定される目安の値として念のため前提を置きました)。
<蓄電池設置前までの状況>
・太陽光パネル設置容量:6.0kW
・発電量(年間):6,000kWh
・売電量(年間):4,000kWh
・自家消費量(年間)(発電量から売電量を差し引いた量):2,000kWh
・買電量(年間):5,000kWh
・電力消費量(年間)(自家消費量と買電量を足した量):7,000 kWh
・電気料金単価:35円/kWh(段階料金をおおよそ均した値を前提に置きました。)(←買電量が増えるほど単価が段階的に上がっていくため、実際には買電量が増えていき一定量を超えると、35円/kWhよりも高い平均単価になっていきます。)
・売電単価:8.5円/kWh(卒FIT後)
蓄電池を設置したことによる節電金額の計算
上記前提のご家庭が、新たに蓄電池を設置したとします。
その時の節電金額を計算すると・・・
まず、蓄電池を設置するということは、それまで「売電」していた電力の一部が、「蓄電池への充電(自家消費)」に変わるということになりますので、ここでは、蓄電池設置前に売電していた電力(このケースの場合:年間4,000kWh)の半分(50%)(※)の2,000kWhが「蓄電池への充電(自家消費)」に変わったと仮定します(残りの50%は売電のまま)。
(※)どのくらいの割合が「売電」から「蓄電池への充電(自家消費)」に変わるかは、蓄電池の蓄電容量や(天候に左右される)発電量などによるので、このケースでは「50%」としましたが、前提の数字(割合)の置き方が悩ましいところです。
(※)厳密にいうと、太陽光発電した電力を蓄電池に充電する時と、蓄電池から電力を放電する時に「ロス」が発生します。ですので、太陽光発電で余った電力は、それを蓄電池に充電しても、目一杯の量を家庭で使う電気に充てられるわけではありません。
蓄電池設置による効果、すなわち「太陽光発電+蓄電池」の節電効果から「太陽光発電のみ」の節電効果を差し引いた効果(1年間の節電金額)は、(細かい計算はなしにして)シンプルに言うと、以下のとおりです。
蓄電池の設置により、買電(35円/ kWh)が減る分、売電(8.5円/ kWh)も減ります(自家消費が増える)。このケースでは、年間2,000kWh分、「売電」から「蓄電池への充電」(自家消費分=買電減少分)に変わったので、
(35円/ kWh -8.5円/ kWh)×2,000kWh=53,000円の節電金額(年間)となります。つまり、買電単価と売電単価の差額分、節電効果が出るわけです。
蓄電池の設置費用の回収期間
東京都の補助金を踏まえた蓄電池の実質的な設置費用は、上記のとおり、630,000円でしたので、
630,000円(実質的な設置費用)÷53,000円(年間節電金額)=11.88年(回収期間)
つまり、12年あれば元が取れる(※)という計算になりました。
(※)上記ケースにおいては、12年あれば、「太陽光発電+蓄電池」の節電効果から「太陽光発電のみ」の節電効果を差し引いた効果(節電金額)が、補助金を踏まえた蓄電池の実質的な設置費用(63万円)を上回るという結果です。
所感・留意点
・実際にありえそうなケースを前提に置いてシミュレーションしたところ、一般的な蓄電池の保証期間程度(10年~15年)の期間で元が取れる計算になりました。もちろん、前提の置き方(蓄電池設置費用や蓄電池設置による自家消費の増加度合い等)により、蓄電池の設置費用の回収にかかる期間も変わってきますが、東京都の補助金の大きさがあれば、多くのご家庭(もともとある程度買電量と売電量が多い場合)において「元が取れる」可能性は高いと思われます。
・『蓄電池を設置することにより「自家消費」がどれだけ増えるか』がポイントとなります。言い換えれば、蓄電池を設置したことにより、それまで「売電」していた電力をどれだけ「蓄電池への充電」に変えられるかです。
・東京都の補助金は、助成率が、かかった費用(設備費・工事費)の「4分の3」と高額であるので、東京都民で蓄電池を考えている人は、検討するいい機会と思われます。
・消費税部分は補助金の対象になりません。
・補助金は、設置工事まですべて終わった後、実績報告などをして、しばらく経ってからはじめてもらうことができます。ですので、分割払いにしない限りは、販売業者さんへの設置費用の支払い(全額)は、補助金受領よりも先に行うことになります。
・東京都の補助金以外にも国や区市町村の補助金があるので、それらを利用すればもう少し設置費用の回収期間は短くなります。各補助金について、それぞれの申請開始時期や実績報告締め切り時期などを事前にしっかりと把握した上で、「すべての補助金を利用できるタイミングで蓄電池設置までのスケジュールを立てる」ということが補助金を最大限に受けるためのポイントです。
・今回は単純に「蓄電池設置に支払った費用を、東京都の補助金と蓄電池での節電で回収できるか」という点でシミュレーションしましたが、蓄電池設置によって得られる「停電時対策」といった安心感を(決まった金額というものはありませんが)「保険料」ととらえ、それを含めて考えるやり方もあると思います。例えば、各ご家庭の考え方次第で「蓄電池の停電時対策の役割は、1年間で1万円払う価値のある保険料」と考えれば、10年間にすると10万円の保険料が蓄電池のもともとの設置費用に含まれていると解釈することができます。
・今回、蓄電池の設置費用を、「蓄電池を追加したこと」だけの節電効果で(もともとの太陽光発電の節電効果を除いて)回収できる期間をシミュレーションしましたが、そうではなく「蓄電池+太陽光発電」両方の節電効果で(もともとの太陽光発電の節電効果も含めて)回収できる期間をシミュレーションすれば、回収期間は半分くらい(5年~6年)に短縮されることになります。